「俺だって勉強してるつもりだよ。でも、いつも結果が全然で」
「じゃあ点数取れる方法、教えてあげようか?」
長瀬の言動に不信感を持ったが、ああ、と加藤はうなずく。
「それはね『食わず嫌いをしない事』かな」
「食わず嫌い?」
「そう、食わず嫌い。加藤君、嫌いな教科とかあるでしょ?」
「ああ、あるけど。それがどうしたんだよ」
「何でそれが苦手か、自分でわかってる?」
加藤は首を振って、言う。
「第一理解できないからさ、嫌いなものは」
「それ」
同時に長瀬が人差し指を加藤に向ける。
「理解できない、じゃなくて『理解しない』じゃないの?それが食わず嫌いだよ」
「勝手に決め付けるなって。それに意味不明だしさ」
「じゃあもう一つ聞くけど、なんであの時キャベツ食べなかったの?」
出た。長瀬の悪い癖。呆れた加藤は、目線をそらす。それが長瀬には逃げているように感じた。
「それって、食べず嫌いじゃないの?野菜嫌いの典型的な例だよ」
「違う」
加藤は反論する。
「俺はさ、あのキャベツの色も、味も、匂いも、全部嫌いなんだよ。食べず嫌いじゃなくて、ただ単に『嫌い』なだけ。分からないだろ、お前には。野菜嫌いの奴の気持ちなんか」
「うん、全然分からないよ。あんなに美味しいのに、なんで嫌いなのか。でもね、それはそれで良いと思う」
「矛盾してないか?何か」
「私が言いたいのはね、嫌いなら嫌いで良いと思うの。人によって好みは違うし、別に無理して好きになる必要なんて無い。でもね、私は食わず嫌いが一番嫌なの。見た目だけで判断して、その味を理解しようともしないで捨てたりするなんて、最低」
長瀬が続ける。
「だから、キャベツが嫌いならそれでいいの。世界史が嫌いならそれでいいの。でもね、ちゃんと理解する努力もしないのに、嫌いなんて言って欲しく無かった。特に、加藤君には」
「何で俺が出て来るんだよ、そこに」
「あれ?自分が一番分かってるはずじゃない?」
加藤は、長瀬が何を話そうとしているのか、分からなかった。何をだよ、と長瀬に先を促す。
「今朝ね、小杉君に会ったの。偶然、ね。昨日加藤君と色々話したって言ってて何か心配だから見てやってくれって頼まれたの」
長瀬は思わず笑みを浮かべる。
「加藤君って、クラスじゃ暗いんだね。F組に部活の友達がいるから聞こうと思ったのに全然知らない、なんて言われちゃって。もっと話してみればいいのに、クラスの人と」
「どうせ喋っても意味ないだろ」
「ほら、それが食わず嫌い。良いじゃない、別に。意味があるかないかなんて分かる事じゃないよ。話してみれば案外気が合う、って事も少なくないし。それに、色々な人と話せて楽しいと思うよ」
「簡単に言うなよ。それって案外難しいぞ?」
「難しいと思うから難しくなるんじゃない。皆、変な先入観を持つからそれに抵抗ができちゃうんだよ」
「じゃあどうするんだよ」
「そんなの簡単。考え方を変えればいいだけだよ」