「考え方?」
「世界三大珍味、ってあるでしょ?皆美味しそうとか思ってるけど、あれってあくまで珍味であって絶対に美味しい訳じゃないんだよね。だからそれと同じ発想をすればいいんじゃない?」
「キャベツを世界三大珍味にしてみろって?なんだそりゃ」
「これは珍しい食べ物だから今食べないと二度と食べられない!とか一度くらい試してみよう、って思えばいいの」
「そんなに上手くいくのか?それ」
「それは加藤君次第。食べるのは私じゃないからね。…あっ」
長瀬の目線を追うように、加藤は外を見た。随分と話し込んでいたのだろう。先ほどまでの土砂降りが嘘のように、雲の色は大分白くなり、隙間からは光が挿してきていた。
「じゃあ私、先に帰るね」
長瀬はコンビニのある方角とは逆方向を指差した。加藤はああ、と言って左手を上げ
「じゃあな」
と言った。長瀬もそれに笑顔で応じ、手を上げる。長瀬が前へ向き返ったのを確認した加藤は、空に目を移す。日の光が先ほどよりも眩しくなっているのを感じた。思わず、目を閉じてしまう。
「…俺も帰ろうかな」
そう自分に言い聞かせ、動き始めようとした瞬間、頭上の鳴き声が激しくなったのを聞いた。二、三歩ほど戻って巣を見てみると、親鳥が巣に戻っていた。ヒナは親鳥が持ってきた餌に喜びの声をあげながら夢中になっている。そして餌がなくなると親鳥は再び巣を離れた。ヒナはまた声をあげる。加藤はそれに微笑する。始め低空飛行を続けていた親鳥は、上昇気流を見つけると空高く舞い上がって行った。その背中を目で追う。しかし、太陽と重なったせいで親鳥を見失ってしまった。
加藤は巣を見る。そして、中でないているヒナを見る。
「じゃあな」
ヒナに向かって笑ってみせた加藤は、一歩一歩巣から離れていった。