彼女はスッとその場に立ち上がると、砂をはたいた。そして深く深呼吸をして、空に吐いた。
「色々とありがとうね」
俺は天を仰ぐ彼女に答えた。
「ああ、俺も、色々ありがとう」
「そういえば、名前聞いてなかったよね」
「言ってなかったっけ?ごめん」
俺もすぐに立ち上がり早川に向き合った。
「俺は『こむかい しょう』。小さいに方向の向、それに翔るで『小向 翔』」
「うん。それで、わたしの名前は」
「知ってる、ナンシー・早川・ウィリス」
ううん、と軽く首を横にやって、早川は言った。
「早川、じゃなくて ”アン” って呼んでもらいたいの。仲の良い友達にはそう呼んでもらってるから」
―――仲の、良い?
早川はそう言うと校門の方へと向かっていった。そして、振り向きざまに言った。
「じゃあね、ショー君」
「ちょ、ちょっと待てよ」
追いかけようと思った俺の足は早送りにならず、むしろ先ほど望んでいた『永久停止』状態になってしまっていた。その原因はもう分かっている。
歩いていくアンの背中を見ながら、俺は心地良いそよ風が通り過ぎるのを感じていた。