B.O.K 第10章

彼女はスッとその場に立ち上がると、砂をはたいた。そして深く深呼吸をして、空に吐いた。

「色々とありがとうね」

俺は天を仰ぐ彼女に答えた。

「ああ、俺も、色々ありがとう」

「そういえば、名前聞いてなかったよね」

「言ってなかったっけ?ごめん」

俺もすぐに立ち上がり早川に向き合った。

 

「俺は『こむかい しょう』。小さいに方向の向、それに翔るで『小向 翔』」

「うん。それで、わたしの名前は」

「知ってる、ナンシー・早川・ウィリス」

ううん、と軽く首を横にやって、早川は言った。

「早川、じゃなくて アンって呼んでもらいたいの。仲の良い友達にはそう呼んでもらってるから」

 

―――仲の、良い?

 

早川はそう言うと校門の方へと向かっていった。そして、振り向きざまに言った。

「じゃあね、ショー君」

「ちょ、ちょっと待てよ」

追いかけようと思った俺の足は早送りにならず、むしろ先ほど望んでいた『永久停止』状態になってしまっていた。その原因はもう分かっている。

 

歩いていくアンの背中を見ながら、俺は心地良いそよ風が通り過ぎるのを感じていた。