「お、ショーが来たぞショーが」
教室のドアに手をかけると、すでにクラス内にはいくつかのグループが出来ていて、騒いでいるのが見えた。その中の俺がいつもつるんでいるメンバーの一人、中川が俺に手を振っていた。
「お前、焼けたな」
ドアを閉め、中川に近づいた俺は笑いながら言った。中川の肌は、休み前までの病的な白いものが嘘のようにこんがりとしたきつね色に変わっていた。その張本人は少しムッとした表情になったのが、周りの奴らにもわかったようだ。
「こいつさ、東京の海に逆ナン狙いで行ったらしいぜ」
「マジかよ、で、結果は?」
中川のほうに目をやるが、首を横振りだった。
「全然ダメ。いかにもフリーです、って感じで一日中体焼いてても声の1つかからなかった。おかげで次の日は日焼けで死にそうになったっての」
さらに顔の色と同じ腕を、中川はまくって見せた。
「にしても焼けすぎだよな。日焼け止め塗らなかったのか?」
「すぐにお持ち帰りされると思ったから塗らなかったんだってよ」
中川が泣きそうな目で俺を見てくる。その目が消費者金融のCMの「アレ」みたいなのがおかしくて、噴出しそうになるのをこらえながら俺は、
「お前、本当に冒険家だよな。俺には絶対できないって」
と、フォローを加えた。
「違うよショー、こいつは冒険家なんかじゃなくてただ”バカなだけ”だって」
グループ内で笑いが起きる。中川はまた泣きそうな目を向ける。
―――もう無理、さすがにこれ以上フォローできない。
気づいたときには俺も、笑い声をあげていた。
「はい、座れー」
ドアの開閉音がなると笑い声は自然に止み、始業のチャイムが鳴っているのがわかった。担任が入ってきたのだ。
俺は後方にある自分の席へと戻った。その間俺はクラス内の変化がさほど無かった事を知って得た、嬉しさに似た妙なものを感じていた。